2025/3/9
[ 初回公開日:
2023/11/6
]
大企業のDX 現場におけるリアルな課題をLooker導入を例に その2


DX進行の人材課題
大企業は人材が豊富であるとはいえ、ITやDX部門には専門の人材がいますが、現場で高度なツールを利用できる人材が必ずしもいるわけではありません。利用開始当初は研修や勉強会などのサポートが提供されるものの、ZoomやSlackのようなコミュニケーションツールの利用と、Lookerのような高度なBIツールの活用は本質的に異なります。
前者は研修や勉強会、または周囲にいる知識が豊富な人に教えてもらいながら実務で利用することで習得できますが、高度なITツールの利用はそうはいきません。単純にツールの使い方だけであれば、マニュアルや動画を参照して覚えることは可能ですが、基礎となるITやWebの知識、統計学の基本を理解していなければ、現場で起こっている課題の分析に使うデータを抽出したりビジュアル化するのは困難です。
ツールの開発元や外部のパートナー、社内のIT部門からのサポートは受けることができますが、「何を分析したいのか」という問いを明確に落とし込むまでのハードルが高く、時間がかかります。例えば、日々お客様とのやりとりに忙しい事業部が、これに時間を割けるかというと現実的には難しいでしょう。
「わからないことがあればいつでも聞いてください」と言われても、ツール自体の使い方ではなく、どういう切り口で分析するのが良いのかを考え、その上でツール上でどう操作して目的のものを抽出するか、というところに大きなギャップが存在します。
解決策とその困難さ
解決策としては、ツールに詳しい開発元やIT部門の人材が「事業部に入って一緒にビジネスを行う」ことが理想的ですが、それは「人材不足」の問題により実現が困難です。各事業部や各プロジェクトに専門の人材を配置するほどの人数は業界全体として圧倒的に不足しており、現実的には無理があります。
IT人材が不足しているというニュースは頻繁に見かけますが、この問題はChatGPTやGemini、LLAMA3などの最新の生成AIによって部分的に解消できる可能性があります。しかし、現在課題となっているIT人材・DX人材の不足は、AIだけでは解決できない領域であり、戦略的な人材育成と人材確保が依然として重要です。
Looker導入後の効果
データ分析の効率化
Looker導入後、適切な実装と活用が進んだ場合には、データ分析の効率が大幅に向上します。従来は数日かかっていたデータ集計や分析レポートの作成が、リアルタイムで自動化されるようになります。また、ダッシュボードを通じて、経営層から現場まで同じデータを見ることができるようになり、情報の透明性と一貫性が向上します。
具体的な効果としては:
手作業によるデータ集計時間の削減(月に数日→数分)
レポート作成プロセスの自動化
データの更新頻度の向上(月次→リアルタイム)
ヒューマンエラーの削減
事業戦略の最適化
Lookerの強力なビジュアライゼーション機能により、複雑なデータを直感的に理解することが可能になります。これにより、データドリブンな意思決定が促進され、事業戦略の最適化に大きく貢献します。
例えば:
顧客行動パターンの可視化による顧客体験の向上
販売データのリアルタイム分析によるキャンペーン効果の即時評価
運用コストの分析による効率化ポイントの特定
市場動向との相関分析による迅速な戦略調整
継続的な改善と展望
改善点と課題の解決
Lookerを導入することで、以前は解決が難しかったデータ関連の課題に対処できるようになります:
データサイロの解消と統合データビューの提供
一貫した指標の定義によるレポートの標準化
セルフサービス分析による分析ボトルネックの解消
データガバナンス強化によるデータ品質の向上
今後の展望と戦略
Lookerの導入は、単なるツール導入にとどまらず、組織全体のデータカルチャー変革の契機となります。今後の展望としては:
高度な分析機能の活用拡大:予測分析やAIとの連携によるインサイト発掘
部門横断データ活用の促進:マーケティング、営業、製品開発など部門間のデータ連携
顧客向けデータプロダクトの開発:Lookerの埋め込み機能を活用した顧客向けダッシュボード提供
データリテラシー向上プログラムの拡充:全社的なデータスキル底上げの取り組み
Lookerを活用する上での推奨事項
効果的なデータ利用法
Lookerの機能を最大限に活用するためには:
明確なビジネス目標に基づいたダッシュボード設計
重要KPIの定期的なレビューと調整
データストーリーテリングを意識した可視化
意思決定プロセスへのデータ分析の組み込み
ツールの活用方法
Lookerの多様な機能をビジネスに活かすためのポイント:
LookMLによるデータモデリングの最適化
スケジュール配信機能による自動レポーティング
アラート機能によるKPI変動の監視
API連携による他システムとの統合
コミュニティとサポートの利用
Looker活用の旅は孤独ではありません。以下のリソースが助けになります:
Looker Community(フォーラム)での知見共有
Looker Blocks(事前構築されたモデル)の活用
Looker Marketplace(拡張機能)の活用
Google Cloudのサポートチームによる技術支援
まとめ
繰り返しになりますが、Lookerに限らずツール自体の導入までは大企業であればどこの会社でもある程度進みます。しかし、真の課題は「現場」での利活用を推進することです。このためには、ツールをビジネスに生かすことのできる人材が現場に必要不可欠です。
リスキリングの重要性が叫ばれていますが、事業部の中からビジネスの現場を理解している人材を選び、データ分析スキルを身につけさせることは容易ではありません。実務で活かすためのITの土台を構築するには時間と継続的な取り組みが必要です。短期間の研修や一時的な学習だけでは乗り越えられないハードルがあります。
現実的なアプローチとしては、優先順位を明確にし、重要な事業・プロジェクトには社内外のIT人材、プロジェクトマネージャーを集中的に配置することが効果的です。これには経営層の理解と決断が不可欠であり、まさにDXへのコミットメントが試される局面です。
初期の成功事例を作ることができれば、組織内での横展開が進みやすくなります。一つの部門での成功が他部門の関心を引き、組織全体のデータドリブン文化の醸成につながっていくのです。
Looker導入の成果と学び
Looker導入プロジェクトを通じて得られる最大の学びは、ツール導入はあくまでも手段であり、目的ではないということです。真の目標は、データを活用したビジネス価値の創出と、データドリブンな組織文化の醸成にあります。
日本企業のDX推進への提言
日本企業の経営者は、DXを技術的な取り組みとしてではなく、ビジネス変革の旅として捉えるべきです。その成功のためには:
経営層のコミットメント:トップダウンでのデータ活用の重要性の発信
人材への投資:IT人材の採用・育成とビジネス人材のデータリテラシー向上
失敗を許容する文化:試行錯誤を奨励し、小さな成功を積み重ねる姿勢
長期的視点:短期的ROIだけでなく、長期的なケイパビリティ構築としての投資判断
DXは一朝一夕に実現するものではありませんが、適切な戦略と継続的な取り組みによって、日本企業も真のデジタル変革を実現することができるでしょう。
その1についは、以下の記事をご覧ください。
大企業のDX 現場におけるリアルな課題をLooker導入を例に その1
また、Googleの提供するもう一つのBIツールLooker Studioとの比較やLookerとLooker Studioの競合ツールについては以下の記事をご覧ください。
LookerとLooker Studio(旧Google Data Portal)の徹底比較!2025年BIツールの選び方
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